箱根 4 オーベルジュ オー・ミラドー - auberge AU MIRADOR
伝説のシェフが築いた 日本初のオーベルジュの真髄
箱根フレンチを築いたシェフの名店
「オーベルジュ オー・ ミラドー」のある芦ノ湖周辺は、箱根湯本側のような賑わいはなく、静寂に包まれている。日本で初めてのオーベルジュとしてその名を馳せる「オーベルジュオー・ミラドー」は、国内だけでなく、海外の著名人も訪れるほどの有名店である。オーベルジュとは、宿泊施設付きのレス トランのことで、その土地の食材で調理された極上の料理を思う存分楽しめる宿である。そして、オーベルジュというのは郊外にあるものなのだ。
フランスのパリ、ニースなどで修行していた勝又登シェフは、一九七三年、西麻布に 「ビストロ・ド・ラ・シテ」をオープンする。この店はビストロブームの火付け役となり、勝又シェフの名は日本のフランス料理界に知れ渡ることとなる。その五年後、二軒目となる「レストラン オー・シザーブル」を六本木にオープンした。ここでは本格的なヌーベル・キュイジーヌを提供していた。両店舗は瞬く間に人気店となり、東京で成功していた勝又シェフは、東京の店を他人に譲り、一九八六年に箱根の地に日本で最初のオーベルジュを開業した。 勝又シェフはフランスでの修行中にオーベルジュの存在を知り、これは日本でもできると思ったのだという。箱根を選んだのは、箱根周辺で採れる滋味深い山海の食材を調達できることと、 水が綺麗なこと、都心から車で一時間程の距離であること、オーベルジュに欠かせない条件の一つ「郊外や地方にあること」だったからだ。
勝又シェフのチャレンジ精神には、計り知れない情熱を感じる。フランスでの修行中に、厨房で料理の仕上げに使うパセリを手でちぎって直に乗せているのを見て、日本では仕上げのパセリは包丁で細かくカットして水にさらすというのが一般的であったので、驚いたのだという。香りの良い食材の風味をいかす使い方だと知り、勝又シェフの料理は根底から変わった。それ以後、採れたての新鮮な食材を使った料理を作りたいと考え、オーベルジュを開業した。
美味しい料理は食材選びが鍵となる。静岡県三島市の契約農家「廣川農園」から新鮮な野菜を仕入れ、箱根で採れるレモンやキノコ、相模湾や駿河湾の鮮魚などを使用している。勝又シェフのコンセプトは“西と東の融合”。伝統的なフレンチと和食の技法や食材を絶妙にミックスさせている。ボリュームはあるけれど、さっぱりとして食べやすいフレンチになるよう、 調理方法、ソース、付け合わせを工夫して新メニューを創り出している。伝説のシェフは、食材の宝庫である箱根で「箱根フレンチ」という新たなジャンルを作り、箱根を訪れる食通達から今もなお絶大な支持を得ているのである。
2019年12月19日 13時55分 - Yukiko Kawai タグ: #箱根